P12に乗ってみて

P12がやってきた

P10に老化の兆候がみえてから、車検を迎えるという段階になったとき、選択肢は3つありました。 乗り続けるというのがファンとしての愛情でもあったかも知れません。しかし、ナビをつけた際や、この後出てくるであろう故障などへの出費を考えると、若干気持ちが引いてしまっていたことは確かです(実際、前のブルーバードU11では、買った値段の何倍もの金額を修理や車検に費やしてしまいました)。
一方、この頃になるとP12も熟成されてきたのか、世の中での評判も固まりつつありました。まぁ、斬新なデザインは賛否両論という感じがありましたが、当初不評といわれてきた3ナンバー専用ボディについても、日本のミッドクラスの乗用車が結局1700ミリ越えを次々にせざるを得なかった通りで、結局先見の明があったというところだったと思います。

そんなところに、P12のマイナーチェンジの話が来ました。今回(2002年)のマイナーでは、「ITドライビング」という当初の売り文句にふさわしい、CARWINGSやIT-Naviシフトなどの機能が搭載されて、ナビゲーションも次世代に対応した感がありました。新車購入の機は熟したという感じです。

こうして2002年9月、P12がやってきました。今回はユーティリティのことを考えてステーションワゴンを選択しました。P12の場合、デザインはセダンよりもワゴンの方が流線型できれいだったということも理由の1つです。
購入車種はベースグレードのW20Gですが、オプションとして「IT-Naviパッケージ」を選択することで、CARWINGS搭載ナビとIT-Naviシフト機能を同時に手に入れることができたわけです。

最初の感想

まず乗ってみて感じたのは、「非常に静かだ」ということでした。前のP10が必ずしもうるさかったというわけではないのですが、エンジンの音がどこからもしないように感じるくらい、静かでした。
おそらく、エンジンの騒音対策が非常に進化したということもありますが、エンジンの静穏化、CVTによるATの騒音軽減なども寄与しているのではないかと思います。ただ、エンジンが静かになったことで、いわゆる「SRサウンド」を求めていたスポーツユーザ層は残念がったのではないかという気がします。
次に、2000ccとは思えぬ加速力。エンジンが変わったせいもあるのかと思いましたが、やはりCVTとエンジンの性能がうまくチューンされていたのではないかという気がします。

デザイン

P12は何よりもその売りがデザインでした。先代の「角張った」よくも悪くも保守的なデザインから一転して、丸みを帯びた優美なデザインへの変更。これには発売当時から賛否両論が殺到しました。
不思議なことに、パンフレットなどに描かれていた光景は都会的なものが多いのですが、私のように「田舎」に走りに行く人間にとっても、山並みや海の光景などと調和して、そのデザインをより引き立たせてくれるような感じがしました。おかげで、写真の枚数がどんどん増えてくるのですが。
ワゴンの場合、カーゴスペースを優先させて角張ったデザインになってしまうということもありますが、P12の場合にはワゴンはむしろ車の流線型を際立たせてくれる形となって、こちらの方がセダンよりもきれいにみえる感があります。

内装

P12はまた内装にも徹底したこだわりが貫かれていました。何しろ、スイッチが全くないのです。正確にいうと、全てのスイッチはセンターにある集中制御スペース(「盤」というか「スイッチ」というか非常に難しいところ)にあるのですから。
ここでエアコンからオーディオから全てを制御することになります。あとあるのは、CDを読ませるスロットと地図用DVDのスロットだけ。ものすごく割り切ったデザインです。これは酷評する人もいましたが、私はすんなりと慣れることができました。少なくとも操作系については不自然に思ったことはありません。手順が多いな、と思ったことはありますが(例えば、AMラジオの選局であれば、普通のカーラジオならプリセットボタンを1回押せばいいものを、「AM」→「1〜6」と2回押さなければいけない)、慣れてしまえば「まぁこんなものかな」程度で済んでしまいます。
むしろ、操作系の統一感に喜びを感じるという気持ちの方が強いですね。とにかく全てが集中スイッチに統一されていて、しかも操作系も左右対称になっているというのは、デザイナーの美学を感じることができて、非常に好感を持ちました。
センターメーターも、「スポーツ色を失わせる原因になった」とWikipediaには書かれてしまいましたが、このデザインであれば真ん中にメータを持ってくるのは自然だった(というか、左右対称の美を追求していった末の結論だった)ということではないでしょうか。
まぁ、DVDでビデオが再生できれば、とか細かいことを言えばいろいろありますし、その後の日産車には(マイナー前のプレサージュを除いて)似たコンセプトが継承されなかったことを考えると、私みたいに喜んで応じた人が少数派だったのかな、という危惧もありますが。

CVT初体験

CVT(無段変速)ははじめての体験でしたが、それほど混乱することはありませんでした。みかけはATですし、気がつく人は「2」がないのでおかしいなと思うくらいでしょう。
実際、「L」は一応ありますが、ここに入れることはめったにありません(というか、説明書にも「低速走行時にのみ使用のこと」と書いてあります。L設定は積雪路面などのことを考えてでしょうか?)。
エンジンとCVTをコンピュータで自動制御しているので、アクセルの踏み具合に応じてエンジンの回転数がほぼ一定のところを指すように、自動変速が行われていきます。そのためうっかりするとアクセル戻しのタイミングを忘れてしまい、気がつくとオーバースピードという局面が最初のうちずいぶんありました。
「2」がないとするとエンジンブレーキはどうかけるの?と戸惑う方もいらっしゃるかも知れませんが、実はCVTの場合、勾配やアクセル開度などを車が察知して、自動的にエンジンブレーキをかけてくれます。下り坂などで試してもちゃんと途中でエンジンの回転数が上がってエンジンブレーキがかかったことがわかります。
ちょっと戸惑ったのは、CVT特有のくせですが、発進時のクリーピング(アクセルを踏まなくても車が自動的に進む動作)がATに比べて少ないということです。動作性質上CVTにはクリーピングがいらないはずなので、多少無理しているのかも知れませんが、交差点などで発進しようとするときに、しばらくの間はアクセルの踏み方が鈍くて、遅れを取ることがありました。
惜しむらくは、2000ccモデルにもハイパーCVT-M6が設定されていればなぁ、ということでした。最初からCVTだと決めてかかってしまえばマニュアル変速も必要はなく、スポーツモード程度の対応で十分だと思ったのですが、ヨーロッパでの発売車には設定があったということを考えると、日本でも搭載モデルが出ていれば、もう少しプリメーラの寿命も伸ばせたかもしれない、と思います。
また、今だったらエクストロニックCVTの搭載が望まれるところでしたね。日産の他の車がほとんどエクストロニックCVTに変わっていく中で、P12だけはハイパーCVTを貫いたのですが、発売タイミングの問題であったにせよ、この辺はラインナップを揃えるときに何とかならなかったかな、という気がします。

スポーツモード

そのスポーツモードですが、これはCVTを利用した機能の1つで、シフトレバーのスイッチをONにすると、CVTの変速モードが自動的に切り替わり、エンジンの回転数が3000〜4000回転付近になるような制御を行うという機能です。
このモードに入るとさすがにエンジン音が響き渡って、かなり走り込むことができます。山道や市街地での追い越し加速、エンジンブレーキとしての活用などに重宝しました。 実際、このモードをONにすると、ワゴン車と思えないくらいのきびきびした走りをみせてくれました。これでP10の固いサスペンションがついているとよりスポーツっぽい感覚になるのでしょうけど、そうするとP12には合わない感もあります。

IT-Naviシフト

IT-Naviシフトとは、カーナビと連携してCVTのモードを変更するという機能で、プリメーラのマイナーチェンジ時に「世界初」の機能という謳い文句と共に搭載されました。 これは、まずナビの地図情報から「カーブ」や「高速道路」といった情報を読み取り、それに合わせてCVTを最適なモードに変更するというものです。
例えばカーブに差しかかると(正確には、ナビが「カーブに近づいている」ことを察知すると)、カーブの手前で自動的にエンジンブレーキがかかり、エンジンの回転数を上げてくれます。また、高速道路の場合ですと、ナビが「いま高速道路を走行中」と判断すると、それをCVTに伝えて、自動的に最適なCVTとエンジンのセッティングを選択するようになります(高速道路の場合ですと、「ギア比を下げる」形になり、こちらは静かなエンジン音になります)。
この機能にはまず驚きました。というかいちばんP12らしい機能ではないかと思います。IT-Naviシフトがついていると、「運転がうまくなった」と感じられるようですが、実際、カーブなどへのIN/OUT走行が極めてスムーズにできます。特に郊外の速度の速いワインディングロードでは、いちいちブレーキを踏むことなく、アクセル一定のスムーズな走行ができますので、大変重宝しました。少なくともATの車から乗り換えるとこの点だけでも感動ものでした。
もちろん、地図から読み取れないとそのモードに入らないので、欠点もあります。地図を更新していないと(あるいは、更新していても間に合わないと)情報が入らず、IT-Naviシフトの利点を活かせないということもあります。私も経験したのですが、ナビ上での高速道路の未開通区間などを走っていると、それまで高速道路用のセッティングだったものが急に変わって一般道路用になってしまったりします。こればかりはナビの限界なので仕方ないところではあります。

サスペンション

P10の「固い」サスペンションは今や伝説と化した感もあり、マニアの間だけでなく、一般ユーザでも好んで乗っている方が多いところをみると、好評だったということがいえます。P11では「あまりにも固すぎる」という部分が若干緩和されましたが、その点がまた不評を呼んでしまう原因にもなったようです。やはりどんなものでも、一度成功するとそれを継続していくのは難しいようですね。
さてそうするとP12はどうなるのか注目が集まりましたが、結果的には「いいとこ取り」という感じになったと思います。専門的には「剛性が…」とか「中高速域での…」といった評価がなされる(なされた)と思うのですが、乗っている人間からすると、都市内では適度に柔らかく、高速などでは適度に固いという、「猫足」(プジョー車などはよくそういいますよね。乗ったことないけど)の雰囲気を感じました。
P10に乗っていたときには、ちょっとした段差でも「ドシーン」というものすごいショックが来て、一度ならず「壊れたのではないか」と思ったくらいですが、P12ではそのようなこともなく、段差は柔らかく乗り越え、高速でのレーンチェンジのときにはじっと粘ってくれるというサスになってくれていました。

燃費

工事中

カーゴスペース

工事中

見切り

Wikipediaにも書かれていますが、P12の見切りの悪さは、ある意味でデザインとの引き換え事項だったということがあります。
はっきりいいましょう。確かに見切りは悪いです。特にセンターメーターであることがこの点は災いして、前の方の見通しは本当によくありません。
これが困るのは駐車場です。バックするときはバックビューモニターがあるからいいとして、前の方はよく見えないので、知らず知らずのうちに背伸びをしてしまっています。前が壁なら自分のバンパーをこするだけで済みますが、大抵の場合、駐車場は前に車が止まっているようなシチュエーションが多いので(それも高級車だったりすると)、非常に神経を遣います。
ただ不思議なことに、これで前の車(や壁)をこすった、ということは思ったほどありません。かえって気をつけてしまうせいなのでしょうか。



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