管理メモをつけよう

常時接続やサーバ自体の数の増加に伴って、「クライアントだけ」、つまり、サービスの提供を受けるだけのマシンから、サーバとしても機能するマシンが増えてきている。自宅のパソコンがファイアウォールやゲートウェイになっていたり、自分の会社にあるマシンで共有ディスクやプリンタを提供しているケースは、もうごく当たり前になりつつある。

こういうときに問題になるのは、システムにどのような設定を施したか、また、オリジナルのシステムからどのような変更を施したか、ユーザ(すなわち管理者)が忘れてしまいがちなことである。また、管理者が複数いるシステムでは、管理者の誰かが施した修正や、管理者がいないうちに発生したエラーなどを把握しきれない、というケースも発生する。
このように、管理にかかわる情報伝達がうまくいかないと、たとえば同じ作業を2度、3度と行ってしまうために効率が下がったり、逆にすべき作業をしなかったりといったことが起こる。こういった事態は、ひいてはセキュリティの低下やシステム障害につながる。

明日の自分は自分ではない。今日やったことも、明日になれば忘れてしまうかもしれない。コンピュータがもしあなたにとって重要な仕事(遊び)道具であれば、あるいは他にサービスを提供しているのであれば、今日から早速管理メモをつけよう。

どう管理メモをつけるか？

管理メモは、自分が今までに行ってきた作業をメモしておくものである。このようなコンセプトであるから、過去に行った作業が忠実に書かれていることが必要である。
そこで、小さなノート(B6版くらいのハンディタイプ)などを用意しよう。このくらいのサイズのノートであれば、マシンの脇に置いてあっても目立たないし、場所をとることがない。何よりも、置き場所はマシンのそばに限定し、そこから持ち出さないようにする。
ノートにする理由は、過去の作業がすべて記録されるからである。ルーズリーフや裏紙などのメモは、紛失しがちなのでお薦めできない。たとえ綴じてあっても、何年も使っているうちに、綴じ穴が切れかかったり、ホッチキスがさびたりすれば、いつの間にか紛失してしまう事態が起きる。

コンピュータ上のテキストという手もあるが、私自身の経験からいうとあまりお薦めできない。なぜかというと、たいていの場合にはこういったメモを参照しなければならないのは、コンピュータが立ち上がらないような非常事態だからである。また、コンピュータ上のファイルは、誤操作などで消されるなど、あまり安全とはいえない。
リモートで管理している場合にどうするかというのは問題であるが、このときは次善の策として、作業内容を(自分自身、あるいは共同管理者に)メールで出しておいて、それを綴じ込む(できれば、ノートに張りつける)のがよい。こうすれば、自分自身にとっても備忘録になり、例えコンピュータ上のファイルが読めないときでも、自分の送信控えを見れば何とかなるからである。

どんなノートをつける？

私自身は、こういうノートをつけていることが多い。

表紙の裏側には、そのコンピュータの仕様を書いておく。例えば、
- 機種名、搭載メモリ、ディスク容量(例: SPARCstation 1+, 16MB, 内蔵で200MB, 外付けで500MB。できればインタフェースも書いておくべきであろう)。
- システムのシリアル番号や、(Sunの機械であれば)hostid。
- 最初にインストールされたOSの種類、バージョン。
- ネットワークに関係した情報(IPアドレス、ネットマスク、ブロードキャストアドレス、ホスト名、ゲートウェイIPアドレスなど)
- 接続されている周辺装置の名称、種類。内蔵のカードなどがあれば、その種類、名称、シリアル番号
こうしておくと、このページを見ただけで、障害の際にユーザサポートなどに問い合わせるときにも簡単にできる。
ページからは順々に、行った変更を記録していく。どのようなことを書き留めるかは、そのサイトの方針にもよるが、
- システムの設定ファイルへの変更の記録
- 新たなソフトウェアのインストール(インストール先、設定の内容、インストールに伴って変更したシステム設定)
- アプリケーションのアンインストール
- ユーザの追加、削除
- 不具合の記録
- 頻度にもよるがバックアップの記録など。あまり頻繁だったり、定期的に行う設定になっていたら、あまり書く意味はないかもしれない。この場合、むしろ失敗した際に記述するのがよい。
などがある。
不具合などの記録については、ユーザにも自由に書き込んでもらうようにする。また、何かあったときには記録をつけてもらうよう、ユーザに対する教育も行う必要がある。もちろん、誰が書いたか分かるように、名前も書いてもらうようにする。
管理メモに記述する内容は、システム管理に必要なことだけにする。例えば、請求書の宛て先などはこの管理メモに記述する必要はない。逆に、ユーザサポートへの連絡先の電話番号などは、裏表紙などに書いておくと参照しやすいであろう。

記述の実例

たとえばこんな風である。

gzipをインストール
ftp.gnu.org から入手
バージョン 1.2.4
ソースを展開、./configure→make→make install
インストール先は /usr/local/bin/gzip

zcatとしてもうまく動作しないため、改めてプログラムをgzcatとmvして
gzcat機能が動作

また、不具合についてはこんな風である。

外付けHDD(1GB)から異音がする。
画面メッセージ "SCSI Timeout"が何度か出ている
システムの動作自体に異常はない。

異音が止まらない(8/1)。
ディスク自体は正常動作

記録は極力、ボールペンやサインペンなど、消せない筆記具で行う。もし間違ってしまったら(見苦しくはなるが)見え消しでその部分を消してしまう。ただ、「墨消し」、つまり真っ黒に消してしまうのはよくない。なぜかというと、その失敗自体も重要な記録になるからである。
失敗した経過も書いておけば、あとで同じような事態に陥ったときにも、失敗したことをはやく見つけだすことができるようになり、それ以上の事態に進まないようにできることが見込める。

こういった記録は、インストールをしながら、その操作を行う都度書き込んでいくとよい。もちろん、見栄えを優先させるならば、全て終わってからメモを書き込むのがいいのだが、問題は見栄えではなく、その際に何を行ったかという記録だからである。もしメモをきれいにするのであれば、あとできれいにまとめればすむ話だからである。

古くなったノートは、捨てずに必ず保存しておく。積み重なった変更があとで重要な記録となるからである。
また、管理者としては、このような記録があとで経験として役に立つ(実際、このメモもこういった管理記録から生まれてきている)。記録をつけているときには面倒かもしれないが、不具合が起きたときにかかる時間を考えると、こういった管理メモは最終的には時間を節約することにつながるのである。
「自宅のパソコンは自分しか使わないから」という方であっても、トラブルは必ず起こるものである。そういった事態に備えて、簡単でもいいから、管理メモをとる習慣をつけるようにしよう。

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