小さなルールで大きなゆとり

先月、久々の息抜きということで、北海道旅行へと出かけてきた。

その途中に泊まったのが、トマムリゾート(星野リゾートトマム)である。教え子がそこで働いているということもあるのだが、北海道へ行ってぼーっとするのにちょうどいい場所である、というのも大きな理由ではある。

さて、そこを離れる日の朝。朝食をとるためにレストランへと降りていく。席に案内されて、スタッフの方から渡されたのが、小さな紙の札である。みると表に「食事中」と書いてある。
このレストランはバイキングなのだが、席を立ってしまうと、食べ終わって席が開いているのか、単に食べ物をとりに行っているだけなのか区別がつかない。下げるのもできないし、かといってお客さんに聞くというのもなかなか難しい。そこで、この紙の登場である。

食べ物をとりに行っているときは、この「食事中」の札を表にしておく。終わって席を立つときには裏返しにする。裏には、「ごちそうさまでした」と書いてある。ちなみにこの札、日英中韓の4ヶ国語である。
ものすごくシンプルなルールだが、朝の混みあうレストランで、非常に有効に機能しているように見えた。それほど広いお店ではないのだが、お客さんを効果的に誘導しているようである。

確かに、店員さんが客の様子をしっかり見抜いて、食べ終わったのか食事をとりに行っているだけなのかを把握できるのが理想的ではある。しかし、店員さんが全てのお客の所作を見抜けるわけでもないし、朝の混みあうレストランでは効率が最重要課題である。そういうときに、誰もが守れるような小さなルールを設定して、お客さんと店員さんとが協力して、お店という限られたリソースを最大限に利用することができる、というのはいいアイディア、いい発想ではないかと、私は感じた。

みるに、その札は店員さんの手作りのようで、決してお金がかかっているものではない。おそらく現場の発想なのだと思うが、大体において朝というのは(たとえ時間をゆっくり過ごしたい人ばかりが集まっているリゾートホテルというところであっても)忙しいものである。実際そのお店もお客さんを順番に席に誘導するくらいである。
であれば、小さなルールを設けることで、ある程度のところでお客さんと店員さんの協力関係を築いて、互いが気持ちよく過ごせる・仕事できる環境を作った方が良さそうである。

ちょっといい気持ちで、トマムを後にすることができた。

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フラッグスタッフへ (その2)

というわけで、長いフライトのあとの長い(?)ドライブでフラッグスタッフにたどり着いたわけですが、多くの人はなぜ「フラッグスタッフなの?」と思うことでしょう。

フラッグスタッフには、アメリカ地質調査所(USGS)の宇宙地質学(Astrogeology)セクションがあります。アリゾナ隕石孔からもすぐ近くにあり、まさに天体のフィールドワークを実地で行える場所に、こういうセクションが設けられたのは自然なことといえましょう。

現在では、この部門は、月・惑星探査のデータ処理やそのためのソフトウェア開発などを幅広く行なっています。今回、USGS Astrogeology Sectionのメンバーが主催して、ツール開発者や利用者など、いろいろな立場の人が一同に会してのワークショップ開催となったものです。

 

さて、会場は北アリゾナ大学(NAU: Northern Arizona University).街中にある大学です。最初は「どうせ単科大学くらいだろう」と思っていたのですが差にあらず。でかいキャンパスには25000人の学生が学んでいます(ただ、実際にはサテライトキャンパスがあるので、学生数はもう少し少ないみたいですが)。
実際、街中を歩いていると、どうみても学生さんという人たちを多く見かけました。歴史ある街ではあるが、若い人達で活気もあるというのは、本当に私の住んでいる街、会津若松とそっくりです。いつか姉妹都市になったらいいのになぁ。

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会議会場は、大学の南側にあるデュボイスセンターというところです。北側の入り口から入ると、大学の中を10分ドライブしてようやく着く、というところです。もう夏休みなのか、大学はあちこちで工事中で、片側通行や回り道があったりします。

今回のワークショップ参加者は約150人というところ。前半はユーザ主体のセッション、後半は開発者主体のセッションで、両方の日程が重なる水曜日に両者の立場からの議論、というスタイルになっています。私は両方の立場からの出席としました(結果的にはそれが正解でした)。

議論は初日から非常に濃密で、メモをとっているノートのページがあっという間にふくれあがっていきます。あまりに多くの情報でこちらがお腹いっぱいになってしまうくらい、役立つ情報、素晴らしい成果、そして同じことをやっている仲間との出会いがありました。
月・惑星探査のデータ管理や公開・解析などのシステムを作る人というのはなかなか少ないかと思っていたのですが、世界的にも結構たくさんいる、というのは嬉しい誤算でした。ただ、多くがUSGSやNASA(とりわけJPL)というところは指摘しておいた方がよいでしょう。

時差ボケは大変ではありますが、それをおしてでも満足する、そしてワクワク、興奮するような内容で、つくづく「来てよかった」という思いを新たにしました。

フラッグスタッフへ (その1)

出張で、アメリカ・アリゾナ州フラッグスタッフに来ています。

 

今回の出張は、「惑星データワークショップ」(Planetary Data Workshop)というもので、月・惑星探査のデータの解析、保存、及びそのためのシステム開発などについて、これらに携わっている研究者が一同に会して議論する、というものです。

フラッグスタッフはアリゾナ州の北部にあります。グランドキャニオンやアリゾナ隕石孔(クレーター)観光の拠点としても有名ですし、古き良きアメリカの面影を残す街としても親しまれています。

 

さて、今回はロサンゼルス経由で、アリゾナ州州都のフェニックスまで飛行機で往復し、そこからレンタカーで動くという手を取りました。フラッグスタッフにも空港はあるのですが、飛行機便が少ない上に乗り継ぎが悪かったり、航空運賃が高くなる、ということを避けたかったのです。

いちばん時間も良く、値段も安かったので、今回はデルタ航空の便をチョイス。前回3月の出張では、デトロイト行きの便でトイレが壊れているわいすは勝手にリクライニングするわで「もう乗らない」と思っていたのですが、わずか3ヶ月で方針転換です(笑)。

今回は特に航空機にもフライトにも問題なく、無事フェニックスに到着…したのですが、なんと今アメリカを覆っている熱波で、フェニックスはとんでもない高温になっていました。到着した時も気温はなんと40度。華氏で110度とか書かれるとさらに高温感が増しますね。沸騰しそうな暑さ、というか…

 

さて、ここからフラッグスタッフまではレンタカーでドライブです。距離にして約250キロ。一直線にインターステート17号線を走れば、約3時間で着きます。

今回は、ナビ無しのレンタカーを選びました。前回某Hertzレンタカーで、ナビゲーション(NeverLost(TM))付きのレンタカーを借りたのですが、これに頼ってホテル(20キロほど先)まで行こうとしたところ、とんでもない目的地を指定してくれて、夜のヒューストンで道に迷うという目に会いました。今回はLostするナビ(笑)は忘れ、自前のタブレットのマップ機能+ナビ機能で進むことにしました。といっても道は事実上ほとんど一本道なので、インターステートに入るところと出てからホテルまでさえ間違えなければまず問題ありません(といっても、たいていそこを間違えるわけですが)。

インターステートは、フェニックス市内は制限速度55マイル、郊外に出ると65マイル、さらに街から遠ざかると75マイルとなります。時速120キロ。実際に走ると結構なスピード感です。しかし、ほとんどの車は私の車を追い抜いて走っていきますので、多分80マイルくらいは出しているのでしょう。

ただ、道のそこここにはパトカーが待機していましたし、私も一度追尾されました(瞬時にスピードダウンしたのでそのまま離れてくれましたが)。さらにとっつかまっている車も見かけました。皆さんスピード違反には十分ご注意を。

こういうときにはオートクルーズ機能が役立ちます。この車にもついていましたので試してみました。一度使い慣れると楽ですね。ずっとアクセルに足を置かなくても、車が勝手に走って行ってくれます。ただ、前に遅い車がいると減速をしなければいけません。ついついラクチンさに慣れて注意散漫になると、異常接近してしまいますので、オートクルーズでも運転は慎重に。

 

フラッグスタッフは標高約2100メートルという高原都市。一方のフェニックスは300メートル。250キロかけて、この1800メートルの標高差を登っていきます。途中にはかなりの上り坂もあり、日本でいえば中央道や長野道などを思い出させるような山岳ルートもありました。こういうところは制限速度65マイルになります。えらくのろのろのトラック(なんで登坂車線というものが存在しないんだ)と、制限速度超でかっ飛ばす地元車にはさまれて、結構大変なドライブでした。

ですが、景色は美しいですね。フェニックスを出てしばらくは砂漠の光景がずっと続き、遠くに、山頂が平らなテーブルマウンテンが見えます。そこから一気に山を登って行くと、周りは次第に緑が増えてきます。やがて、国立公園の中を走っていくルートとなり、空の青さがより目にしみるようになると、フラッグスタッフはもうすぐです。

 

結局休憩+事故渋滞のため、3時間でフラッグスタッフに無事到着。いよいよ、ワークショップというところです。