クレメンタイン画像からの画質情報抽出の試み
−より高精度なデータ利用のために−
寺薗淳也((財)日本宇宙フォーラム)、齋藤潤(西松建設技術研究所)
分光画像から月表層の岩相を探る試みは、特にアメリカのクレメンタイン衛
星が200万枚以上もの大量の分光画像データを取得したことから、近年着実に進
められてきている。また、日本においてはSELENE計画が立案されており、ここ
では月全体にわたってより高精度の分光データを取得する計画となっている。
しかし、クレメンタインの画像についてはダイナミックレンジに乏しく、256
階調画像であるにも関らず有効なダイナミックレンジは3〜4程度しかないとい
うケースが多くみられる。また、分光画像解析についても、photometric
correctionに使用されているパラメータが充分確定しているとは言えず、特に
phase-angleが小さいデータについて不確定要素が残っている。
今後、月においてサイエンス、開発・利用の双方から、月の岩相についてよ
り高精度のデータが必要となると考えられる。一方で、サンプルリターンなど
により、月の広範囲の物質情報が得られるのはかなり先であろう。そのため、
より信頼性の高い探査を行うために、幾つかの地域について様々なデータを総
合して調査することで、月地質調査のための基準地域を設定する事が必要と考
えられる。我々は現在利用可能なデータを総合して、どこの地域に最も多く、
そして信頼性の高いデータがあるのかを探し、その地域についてデータセット
を作成する事を提案したい。
現在、そのための第1段階のアプローチとして、月の分光グローバルマッピン
グデータであるクレメンタイン探査機のデータを題材に、画質を表現するパラ
メータにはどのようなものがあるかを、画像データのヘッダに含まれるデータ
から調べている。クレメンタインの画像データのヘッダには、標準偏差、圧縮
率、最大輝度値、最小輝度値など様々な画質に関係したデータが含まれている。
Orbit 157の全画像データから、これらをperlスクリプトを使用して抽出し、
これらの相関関係などを調べている。またこれらの情報を地図の形で明らかに
するためのシステムについても合わせて検討している。
これらの試みにより、月表層について信頼できるデータがどこにあるか、明
らかにすることができると考えられる。
(受付番号 Ah-0221163k-4)
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