常時接続やサーバ自体の数の増加に伴って、「クライアントだけ」、つまり、サービスの提供を受けるだけのマシンから、サーバとしても機能するマシンが増えてきている。自宅のパソコンがファイアウォールやゲートウェイになっていたり、自分の会社にあるマシンで共有ディスクやプリンタを提供しているケースは、もうごく当たり前になりつつある。
こういうときに問題になるのは、システムにどのような設定を施したか、また、オリジナルのシステムからどのような変更を施したか、ユーザ(すなわち管理者)が忘れてしまいがちなことである。また、管理者が複数いるシステムでは、管理者の誰かが施した修正や、管理者がいないうちに発生したエラーなどを把握しきれない、というケースも発生する。
このように、管理にかかわる情報伝達がうまくいかないと、たとえば同じ作業を2度、3度と行ってしまうために効率が下がったり、逆にすべき作業をしなかったりといったことが起こる。こういった事態は、ひいてはセキュリティの低下やシステム障害につながる。
明日の自分は自分ではない。今日やったことも、明日になれば忘れてしまうかもしれない。コンピュータがもしあなたにとって重要な仕事(遊び)道具であれば、あるいは他にサービスを提供しているのであれば、今日から早速管理メモをつけよう。
コンピュータ上のテキストという手もあるが、私自身の経験からいうとあまりお薦めできない。なぜかというと、たいていの場合にはこういったメモを参照しなければならないのは、コンピュータが立ち上がらないような非常事態だからである。また、コンピュータ上のファイルは、誤操作などで消されるなど、あまり安全とはいえない。
リモートで管理している場合にどうするかというのは問題であるが、このときは次善の策として、作業内容を(自分自身、あるいは共同管理者に)メールで出しておいて、それを綴じ込む(できれば、ノートに張りつける)のがよい。こうすれば、自分自身にとっても備忘録になり、例えコンピュータ上のファイルが読めないときでも、自分の送信控えを見れば何とかなるからである。
私自身は、こういうノートをつけていることが多い。
たとえばこんな風である。
gzipをインストール ftp.gnu.org から入手 バージョン 1.2.4 ソースを展開、./configure→make→make install インストール先は /usr/local/bin/gzip zcatとしてもうまく動作しないため、改めてプログラムをgzcatとmvして gzcat機能が動作
外付けHDD(1GB)から異音がする。 画面メッセージ "SCSI Timeout"が何度か出ている システムの動作自体に異常はない。 異音が止まらない(8/1)。 ディスク自体は正常動作
記録は極力、ボールペンやサインペンなど、消せない筆記具で行う。もし間違ってしまったら(見苦しくはなるが)見え消しでその部分を消してしまう。ただ、「墨消し」、つまり真っ黒に消してしまうのはよくない。なぜかというと、その失敗自体も重要な記録になるからである。
失敗した経過も書いておけば、あとで同じような事態に陥ったときにも、失敗したことをはやく見つけだすことができるようになり、それ以上の事態に進まないようにできることが見込める。
こういった記録は、インストールをしながら、その操作を行う都度書き込んでいくとよい。もちろん、見栄えを優先させるならば、全て終わってからメモを書き込むのがいいのだが、問題は見栄えではなく、その際に何を行ったかという記録だからである。もしメモをきれいにするのであれば、あとできれいにまとめればすむ話だからである。
古くなったノートは、捨てずに必ず保存しておく。積み重なった変更があとで重要な記録となるからである。
また、管理者としては、このような記録があとで経験として役に立つ(実際、このメモもこういった管理記録から生まれてきている)。記録をつけているときには面倒かもしれないが、不具合が起きたときにかかる時間を考えると、こういった管理メモは最終的には時間を節約することにつながるのである。
「自宅のパソコンは自分しか使わないから」という方であっても、トラブルは必ず起こるものである。そういった事態に備えて、簡単でもいいから、管理メモをとる習慣をつけるようにしよう。